熊本県で新築住宅を建てるときの耐震性能と設計の考え方

はじめに
2016年4月に発生した熊本地震から10年。
2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1、最大震度7の地震が発生しました。
再び大きな揺れを経験した熊本では、住まいの安全性について改めて考える機会が増えたのではないでしょうか。
これから熊本県で新築住宅を建てる方にとって、住宅の耐震性能は、間取りやデザインと同じように大切なテーマです。
しかし、耐震性能について調べてみると、「耐震等級3」「構造計算」「耐力壁」「制震」など、さまざまな言葉が出てきます。
何を基準に選べばよいのか、迷ってしまう方も少なくありません。
大切なのは、耐震性能を数字だけで判断しないことです。
建物の形状や壁の配置、構造計算、地盤の状態、施工品質など、複数の要素が住宅の安全性に関係しています。
そして、建築家による住まいづくりでは、構造的な安全性と、開放的で美しい空間の両立を考えることも重要です。
安心して暮らせることと、自分たちらしい住まいであること。その両方を大切にした家づくりを考えてみませんか。
この記事では、2016年と2026年の熊本地震を踏まえながら、耐震等級や構造計算の基本、地震に備える住宅設計の考え方をご紹介します。
1. 新築住宅で知っておきたい耐震等級とは?
耐震等級とは、住宅の地震に対する構造躯体の倒壊・崩壊等のしにくさを示す指標です。
住宅性能表示制度では、耐震等級1から3までの3段階に分けられています。
耐震等級1|建築基準法で求められる耐震性能の水準
耐震等級1は、建築基準法で求められる耐震性能に相当する水準です。
極めてまれに発生する大地震に対して、建物の倒壊・崩壊を防ぐことを目的としています。
ただし、倒壊しないことと、地震後も損傷なく住み続けられることは同じではありません。
大きな地震を受けた後には、建物の状態を確認し、必要に応じて補修や安全性の判断を行うことが重要です。
耐震等級2|等級1の1.25倍の地震力に対応
耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の地震力に対して、所定の性能を満たす水準です。
住宅の安全性を考える際に、より高い耐震性能を求める選択肢の一つになります。
耐震等級3|等級1の1.5倍の地震力に対応
耐震等級3は、住宅性能表示制度における最高等級です。
耐震等級1の1.5倍の地震力に対して、所定の性能を満たす水準となります。
ただし、耐震等級3だからといって、すべての地震で損傷しないことが保証されるわけではありません。
また、耐震等級は評価項目ごとに設定されるため、倒壊等防止と損傷防止のどちらについての等級なのかも確認する必要があります。
新築住宅を検討する際には、どの耐震等級を目標とするのか、設計の初期段階で建築士と共有しておくことが大切です。
2. 熊本地震から考える、住宅の耐震性能
2016年の熊本地震では、震度7の揺れが短期間に繰り返し発生しました。
建物にとって、一度の大きな揺れだけでなく、繰り返し強い揺れを受けることが重要な課題であると改めて認識されました。
国土交通省などによる被害調査では、木造住宅の建築年代や構造的な特徴によって、被害状況に違いが見られたことが報告されています。
また、益城町の調査対象地域では、住宅性能表示制度による耐震等級3の木造住宅について、大きな被害を受けずに済んだ事例が確認されています。
ただし、被害の有無は地盤条件や建物の形状、施工状態などにも左右されるため、耐震等級だけで地震後の安全性を判断することはできません。
倒壊を防ぐことと、住み続けられること
耐震設計を考えるうえでは、地震による倒壊を防ぐことが基本となります。
一方で、大地震の後にどの程度の補修が必要になるのか、生活を継続できるのかという視点も重要です。
例えば、構造躯体に大きな損傷がなくても、外壁や内装、設備配管などに被害が生じる場合があります。
そのため、住宅の安全性を考える際には、耐震性能に加えて、設備の固定や維持管理、地震後の点検についても考えておきたいところです。
3. 耐震性を左右する「建物の形」と「壁の配置」
住宅の耐震性能は、使用する構造材の強さだけで決まるものではありません。
建物全体の形状や壁の配置、床や屋根の構造、接合部の強度などが関係しています。
耐力壁のバランスが重要
木造住宅では、地震や風による水平力に抵抗する壁を「耐力壁」と呼びます。
耐力壁は、必要な量を確保するだけでなく、建物全体にバランスよく配置することが重要です。
例えば、南側に大きな窓を集中させ、北側に壁を多く配置した場合、構造計画によっては建物がねじれるように変形しやすくなることがあります。
そのため、開放的なリビングや大きな窓を希望する場合には、設計の初期段階から構造との関係を検討する必要があります。
シンプルな形状は構造計画を整理しやすい
一般的に、凹凸の少ない建物は、構造的な力の流れを整理しやすい傾向があります。
一方、複雑な形状や大きな吹き抜けを設ける場合には、床の剛性や力の伝達などを丁寧に検討することが重要です。
ただし、複雑な形状だから耐震性が低いというわけではありません。
適切な構造設計によって、必要な耐震性能と希望する空間の両立を目指すことができます。
4. 大きな窓や吹き抜けと耐震性は両立できる?
デザイン住宅や注文住宅では、大開口のリビングや吹き抜けを希望する方も多いでしょう。
一方で、「窓を大きくすると地震に弱くなるのでは?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
結論からいえば、大きな窓や吹き抜けがあることだけで、耐震性能が決まるわけではありません。
重要なのは、建物全体の構造計画です。
大開口を設ける場合の考え方
大きな窓を設けると、その部分には一般的な耐力壁を配置できなくなります。
そのため、周辺の壁や柱、梁、接合部などを含めて、建物全体で必要な構造性能を確保する必要があります。
例えば、開口部の位置を調整したり、別の場所に耐力壁を配置したりすることで、希望する空間を実現できる場合があります。
吹き抜けは床の構造にも配慮する
吹き抜けを設けると、その部分には床がなくなるため、水平力を伝える床構面の計画が重要になります。
吹き抜けの大きさや位置によっては、梁や床の補強などが必要になる場合があります。
建築家が間取りを考える際には、空間の美しさだけでなく、構造的に無理のない計画であるかを同時に検討することが大切です。
耐震性のためにデザインを諦めるのではなく、構造を理解したうえで設計の可能性を探ることが、建築家と家づくりを進める魅力の一つです。
5. 構造計算はなぜ重要なのか?

住宅の耐震性能を確認する方法には、建物の規模や構造に応じたさまざまな基準や計算方法があります。
構造計算では、建物に作用する力や、それに対する柱・梁・壁・接合部などの安全性を検討します。
壁量計算と許容応力度計算の違い
木造住宅では、建物の規模や条件に応じて壁量計算などの仕様規定による確認や、構造計算が行われます。
壁量計算は、地震や風に抵抗するために必要な壁量などを確認する方法です。
一方、許容応力度計算では、柱や梁、接合部などに作用する力を検討し、各部材が許容される応力度の範囲に収まるかを確認します。
ただし、どの方法が必要になるかは建物の規模や構造、適用される法令によって異なります。
また、2025年4月には木造建築物に関する建築基準法の構造関係規定が見直され、壁量等の基準も改正されています。
そのため、新築住宅では最新の基準を踏まえた設計が重要です。
「耐震等級3相当」と「耐震等級3」の違い
住宅会社の説明で「耐震等級3相当」という表現を見かけることがあります。
これは一般的に、耐震等級3と同等の性能を想定して設計しているものの、住宅性能評価機関による正式な評価を取得していない場合などに使われる表現です。
ただし、「相当」という言葉だけでは、どのような計算や確認が行われているかは分かりません。
耐震性能を比較する際には、計算方法や評価の有無、取得する書類について確認することが大切です。
6. 地盤の状態も住宅の安全性に関わる
どれだけ建物の構造を丁寧に設計しても、地盤の状態を無視することはできません。
地盤は、建物の重さを支える重要な部分です。
地盤の支持力が不足していたり、不同沈下が生じたりすると、建物に影響を及ぼす可能性があります。
土地購入前に確認したいこと
熊本県内でも、地形や土地の成り立ちによって地盤条件は異なります。
例えば、造成地や盛土を含む土地、河川に近い土地などでは、それぞれの条件に応じた確認が必要です。
ただし、特定の地域や地形だけで地盤の安全性を判断することはできません。
土地の履歴やハザードマップなどを確認し、必要な地盤調査を行うことが重要です。
地盤調査と基礎設計
新築住宅では、地盤調査の結果を踏まえて基礎の設計を検討します。
地盤の状態によっては、地盤改良や杭などの対策が必要になる場合があります。
こうした費用は土地の条件によって大きく異なるため、土地購入前から建築士に相談することで、建築計画全体を考えやすくなります。
7. 耐震性能とデザインを両立するために
住宅の設計では、耐震性能とデザインを別々に考えるのではなく、初期段階から一体的に検討することが重要です。
例えば、広いリビングを希望する場合、単に壁を減らすのではなく、構造的に必要な壁の位置を考えながら空間を構成します。
また、建物の形状を整理することで、外観の美しさと構造計画の合理性が結びつくこともあります。
建築家と構造設計の関係
建築家が住宅を設計する際には、意匠設計だけでなく、構造や設備との整合性を考える必要があります。
必要に応じて構造設計者と連携しながら、建物の安全性と空間の質を両立する方法を検討します。
美しい住宅であること。
日々の暮らしが快適であること。
そして、安心して長く暮らせること。
そのすべてを一つの建築として考えることが、住宅設計の大切な役割です。
よくある質問
Q. 熊本県で新築住宅を建てるなら、耐震等級3は必要ですか?
耐震等級3は、住宅性能表示制度における最高等級であり、より高い耐震性能を求める際の有力な選択肢です。ただし、すべての住宅に一律で取得が義務付けられているわけではありません。希望する安全性や予算、建物の計画に応じて、建築士と検討することが大切です。
Q. 大きな窓のある住宅は地震に弱いですか?
大きな窓があることだけで、住宅の耐震性が低いとは限りません。耐力壁の配置や梁、柱、接合部などを含めて、建物全体の構造計画を行うことが重要です。
Q. 土地が決まっていなくても耐震性について相談できますか?
もちろんです。土地探しの段階から、建築家ならではの視点でアドバイスいたします。
土地の形状や高低差、周辺環境、地盤に関する情報などを確認しながら、希望する住まいと土地の条件を一緒に考えていきます。
地盤調査が必要になる場合もありますが、購入前に確認できる情報を整理することで、より安心して家づくりを進めやすくなります。
まとめ|耐震性能は、住まいの設計から考える
熊本県で新築住宅を建てる際、耐震性能は大切にしたい要素の一つです。
耐震等級や構造計算といった数字や基準だけでなく、建物の形状、壁の配置、地盤、基礎、施工品質など、さまざまな条件が住宅の安全性に関わります。
そして、耐震性を高めることは、必ずしもデザインの自由度を諦めることではありません。
構造を理解し、設計の初期段階から丁寧に検討することで、安全性と美しさを両立した住まいを目指すことができます。
住まいの安心は、目に見えるデザインだけでなく、目に見えない構造への配慮から生まれます。
熊本県で新築住宅・注文住宅をお考えの方へ
BUILBEAT/ふわり建築設計スタジオでは、建築家の視点から、デザインと暮らしやすさ、住宅性能のバランスを大切にした住まいづくりを考えています。
「耐震性能にこだわった新築住宅を建てたい」
「開放的な間取りと耐震性を両立したい」
「土地探しの段階から建築家に相談したい」
そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。
安心して長く暮らせる住まいを、一緒に考えていきましょう。
参考サイト:耐震等級とは?完全ガイド【2026年】1・2・3の違いと選び方・注意点をやさしく解説
参考サイト:【東海地震に備える】 耐震等級2相当、築浅の木造住宅でも倒壊! 構造設計の専門家が見た熊本地震|家づくりガイド記事【くふうイエタテ】
















