熊本の気候と土地に合った家づくり|耐震・断熱構造の考え方
熊本の気候の特徴
熊本は内陸型の気候なので寒暖差が大きいという特徴があります。
また、台風の通り道にもなりやすいことから、強い風や水による被害を比較的受けやすい地域ともいえるでしょう。降水量は梅雨時期が特に多いという特性がありますし、湿気が多い地域でもあります。
この記事では、そんな熊本で快適に、そして安全に過ごすことができる注文住宅を建築するために、どんな要素を考慮していくとよいかを考え、解説していきたいと思います。
出典:熊本県の気候の特徴
熊本の気候から見た、エリアごとの特徴
熊本県はさまざまな地形や自然が見られる地域であり、大まかに次のように地域が分けられます。それぞれの気候特性の違いも含め、ざっくりとご紹介していきます。
・熊本市を中心とした市や郡の「熊本地方」
熊本市・山鹿菊池・荒尾玉名・上益城・宇城八代をまとめた地域です。
西側は平地が多く、東側は山がちで丘陵地帯が多いです。夏は暑いけれど冬は寒く、山側は雪が積もることもあります。年平均気温は17℃程度ですが、冬は平野部でもそれなりに冷え込みます。
・東側の九州山地周辺の「阿蘇地方」
阿蘇周辺の標高が高い地域です。熊本の中では珍しく年間を通して涼しめの気候で、年平均気温は13℃程度です。夏は比較的涼しく過ごしやすいですが、冬は厳しい冷え込みに見舞われます。また、海からの風が九州山地に当たって降雨をもたらすので、多雨な地域でもあります。
・東シナ海や有明海などに面した「天草・芦北地方」
こちらは、東シナ海や有明海などの影響を受けた海洋性の気候で、年間を通して温暖です。年平均気温は18℃程度で、冬の寒さも比較的穏やかなところです。
・人吉周辺の「球磨地方」
人吉盆地を中心とした内陸性の気候と山地型の気候が特徴です。年平均気温は15~16℃で、年間降水量は約2850mmと多く、特に6~7月の梅雨時期に集中します。平地では夏は暑く、冬は寒く、また、山地部では昼夜の気温差が大きいため霧が発生しやすい地域です。
出典:熊本地方気象台
それぞれの地域の「快適さ」
では、次にそれぞれの場所の快適さを実現するために必要な要素についてみていきます。
・阿蘇地方
気温が氷点下になるような地域では、断熱性能が暮らしやすさに大きく影響を与えます。
屋根・外壁・床下をしっかり断熱することはもちろんのこと、熱が出入りしやすい窓には断熱性の高い窓を採用するのが重要なポイントです。
冷気を遮断すれば、冬でも室内の暖かさを保つことが容易になります。
また、積雪することもある地域ですので屋根に雪止め金具をつけておくと安心です。これは屋根から落ちた雪が家財を傷つけたり、ご近所への被害につながったりするのを防ぐことができるためです。
・天草・芦北地方
海洋性の気候のため過ごしやすい気温ですが、海が近い地域だけに注意すべきは潮風です。設備や外装部材だけでなく、お庭やカーポートなどの外構に用いる部材は塩害に強いタイプのものを選んでおくと安心です。
・熊本地方・球磨地方
夏は暑い、冬は寒い、そして、湿度が高い!これがこの二つの地域に共通した気候的特徴であり、熊本県の中で一番多くの人が住んでいるのもこの気候の地域でしょう。
この地域で快適に暮らすために一番注目すべき対策は、まず湿度を制すること。そして断熱と気密の対策です。これらは密接に関係しあっていますので、次の項から順を追って説明していきます。
熊本の家は、湿度を制するが勝ち!
湿気が多い家というと、想像するだけで嫌になる人もいるのではないでしょうか。じめじめしていると不快ですし、カビやダニが発生しやすくなります。しかも、それらが原因の疾患にもなりかねません。
しかしそれだけではなく、建物を傷める原因にもなってしまいます。
寒い冬の日に、窓が結露しているのを見たことがある人も多いでしょう。この結露は室内と屋外の温度差から生じますが、これは表面から見えない壁の内側でもおこります。壁の内側で結露が発生すると、構造材にカビが生えたり腐ったりして建物の強度が弱くなります。
もともと空気に含まれている湿度の高さに加え、夏は室内のエアコンと屋外の暑さ、冬は室内の暖房と屋外の寒さといった日常的によくみられる気温差があいまって結露が生まれますが、このような結露を発生させないために、住宅を建築する段階での十分な対策が必要になるのです。
湿度のコントロールと高気密・高断熱の関係
それでは、先に触れた高断熱と高気密がどのように見えない部分の結露を抑えるのかを見ていきましょう。
高気密・高断熱住宅はその名の通り、壁や床、天井などに高性能な断熱材を施しているので、外気の暑さ寒さをシャットアウトすることができ、室内の温度変化が少なくなります。
また、気密性を確保することで外気が出入りする余分な隙間を無くし、そこに24時間換気を組み合わせることによって家の中で効率的に空気を流すことができるようになります。そうすることで空気の滞留がなくなり、結露の発生を抑えることができるのです。
地震対策の必要性
熊本で家づくりを検討する場合、2016年の熊本地震を踏まえて地震への対策をしたいと考える人も多いかもしれません。
日本は環太平洋造山帯に位置しており、どこにいても地震活動のリスクがあるといわれることもありますが、現在熊本県の断層についてはどのように考えられているのでしょうか。
熊本県では、阿蘇から熊本市周辺で別府−島原地溝帯やその縁を走る布田川(ふたがわ)断層周辺の被害地震がよくおこることが知られています。2016 年に大地震が起きてたくさんの被害が生じたのは布田川・日奈久(ふたがわ・ひなぐ)断層の北部です。
ただし、断層の南側部分はずれ動かず断層が破壊されなかったため、地震の危険性が依然として高いとされています。地震への備えは必要性が高そうです。
なお、この日奈久断層は過去を振り返ると八代~水俣付近で被害地震が多く発生しています。
出典:地震本部
地震の有効な対策
結論からいうと、耐震等級3の注文住宅を建てるのがとても有効です。
2回の震度7、5回の震度6とその他数々の余震を受けた熊本地震でも、耐震等級3の住宅は 倒壊したものがなかったというデータが残っています。
これは地震とお付き合いしていかなくてはならない日本人にとって、心強い味方です。
では、耐震等級とはどんなものでしょうか?
耐震等級は耐震性を表している等級で1~3まであり、3が最高水準です。
建物の強さの指標として見られることも多いです。
次に、耐震等級の等級それぞれの概要をざっくりと見ていきます。
・耐震等級1
建築基準法で許可された最低限の耐震等級です。
・耐震等級2
耐震等級1の1.25倍の耐震強度があります。避難所は最低でも耐震等級2以上でなければなりません。震度7の地震が1回なら耐えられるが、2回来ると倒壊するかもしれない強度です。
・耐震等級3
耐震等級1の1.5倍の耐震強度があります。
災害時に拠点となる消防や警察の建物は基本的に耐震等級3が多いです。
地震保険も強い味方に
しかも、建てた注文住宅が耐震等級3であれば、地震保険の保険料は半分になります。
ただし、「耐震等級3相当」とは違うという点には注意しましょう。「耐震等級3相当」とは耐震等級3と同等の強さではあるが、正式な認定を受けていないものとなります。
以上、熊本の気候や土地に合った家づくりについてまとめてみました。
家づくりのにあたって、どのようなことに留意するとよいか参考にしていただけましたら幸いです。