設計事務所が解説!熊本で注意すべき土地の特徴と構造設計のポイント
熊本で注意すべき土地とは?
この記事を読んでいる人の中には、今後熊本で土地を買うことを考えているけれど、どんな土地を買えばよいか迷っている人が多いことでしょう。
今回は熊本で注意すべき土地について、設計事務所として複数の視点から考えて記事にしていきたいと思います。
熊本の地震から見た視点
熊本で起きた過去の大きな災害といえば、やはり2016年の熊本地震でしょう。
熊本市とその周辺部には、立田山断層、布田川・日奈久(ふたがわ・ひなぐ)断層があり、2016 年に大地震が起きてたくさんの被害が生じたのは布田川・日奈久断層の北部です。
ただし、断層の南側部分はずれ動かず断層が破壊されなかったため、地震の危険性が依然として高いといわれています。国は、この部分の地震発生の切迫度を最も高い「Sランク」としており、やはり地震への備えは今後も必要であるといえそうです。
また、近年注目されている南海トラフ巨大地震でも、熊本県は甚大な被害を被ると予測されています。
このように地震が発生すると、震度7級の強い揺れの観測や水・電気などのライフラインが断たれる可能性があります。熊本は九州ですので南海トラフで予測されている震源地とは離れていますが、できる限りの備えは必要であると思われます。
出典:熊本県の地震活動の特徴
熊本の土地における地盤の揺れやすさ
さて、このように地震が起きた場合、地盤の揺れやすさはどうなっているのでしょうか。地盤によって揺れやすい、揺れにくいといったものが存在するのでしょうか。
結論からいうと、存在します。先日、弊社コラム「熊本で失敗しない土地選び|設計事務所が教える地盤と構造の話」でも触れていますが、「液状化現象」や「地盤沈下」の危険性がある土地は軟弱地盤といわれており、これらの軟弱地盤ほど地震力の影響を大きく受け、揺れを増大させやすいことが分かっています。
具体的に大きな視点で熊本の地盤をエリア分けしますと、内陸でも阿蘇山のカルデラ内(特に北側)や、山鹿市内の菊池川流域などで揺れやすい地盤が見られる地域があります。これらの地域では、地震時に揺れが大きく増幅され、揺れにくい地盤の地域と比べて震度が大きくなる可能性などに注意が必要でしょう。
一方、山地および阿蘇山周辺などでは、比較的揺れにくい地盤の地域が多く見られます。山地・丘陵地の自然地盤は硬く締まった地盤が多いと言えますが、傾斜が大きな山地・丘陵地などでは土地を平たん化する際に盛土造成が行われることがよくあります。過去の地震被災地などでは、盛土造成地では自然地盤と比べて地震時の揺れによる宅地被害が増加することが知られていますので、造成地の住宅では地震対策の際に考慮しておくと良いでしょう。
ただしもちろん、上記のエリア分けは非常に大きな視点で見た場合のざっくりしたものであり、ご近所の土地同士でも地盤の特性が大きく違うということがよくあります。地中の状況は地表からは見ることができないので、同じ住宅地でも別の区画では地盤の強さが全く違うことは私たちのような設計事務所としての経験でもよくあることで、そのため地盤調査は必須なのです。
出典:Be-Do
出典:東京都都市整備局
熊本のその他の災害からみた視点
九州山地に海からの温かい湿った空気が当たると、それによって発生した上昇気流で局地的な大雨になり、水が白川や緑川などに流れ込むので熊本市内でも河川の氾濫が起こりやすくなります。
また、九州に位置する熊本は台風の通り道でもあることから、台風の強い風、さらに、熊本は海に面していますので沿岸地域では高潮や津波にものことも考慮しておくとよいでしょう。
少し見方を変えて、土地の利用制限からの視点
ここまでで自然災害の想定をもとにした視点で土地のことを見てきましたが、場所によっては建築に対してルールが設けられているので、そういった意味で注意が必要という土地もあります。熊本で見られる例をみていきましょう。
特定建築制限地域
熊本市において、特定建築制限地域は、
・原則として建ぺい率40%以下、
・容積率80%以下、
・建築物の高さ10m以下、
・外壁後退距離1m以上
などの制限が設けられる地域です。
市街化調整区域で建築する際は、原則として許可が必要となり、これらの制限が適用されます。また、許可が必要ない場合でも、原則として建築確認の際に、同様の指導が行われます。
・外壁後退・高さ制限
熊本市内のうち旧城南都市計画区域の第二種低層住居専用地域を除く、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域には、外壁面の後退距離(敷地境界線から1メートル)が定められています。また、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域における建築物の高さの制限は10メートルです。
・市街化調整区域
市街化調整区域は、建ぺい率40%以下、容積率80%以下、建築物の高さ10m以下、外壁の後退距離1m以上の制限があります。
特別建築制限地域
熊本には、次の2つのパターンがあります。
・風致地区
目的:
良好な自然的環境を維持し、自然と調和した街づくりを推進すること。
指定地域:
水前寺、江津湖、八景水谷、立田山、本妙寺山、花岡山・万日山、千金甲の7地区。
制限内容:
建ぺい率40%以下、容積率80%以下、建築物の高さ10m以下など。
許可:
風致地区内で建物を建てる場合は、許可が必要な場合があり、その許可の条件として上記の制限が設けられています。
・高さ制限
熊本城の景観を保護するために、海抜55メートル以上の高さを超える建築物は原則として禁止されており、高さ制限を超える建築物を建てるには、特例承認が必要となります。
構造設計のポイント
ここまで、地盤の強さや注意点についてみてきましたが、地盤と構造物には密接な関係があるので、地盤は建物の安全性を左右する大切な要素です。地盤が弱いと、建物の沈下や傾き、ひび割れなどの問題が発生し、建物にも被害を与えます。
その点を踏まえ、ここからは地盤調査や地盤改良で地盤の安全性が確保されたあとの建物の強さを担保するための「構造計算」に裏打ちされた、「構造設計」のお話をしていきます。
意匠設計で意図した建築空間の構成、形状、大きさ、そして高さはどのようなものか。 環境条件として、どんな場所に建つか。その場所の地盤はしっかりしているか。 そこではどのような地震、強風そして雪などが発生するのか。
構造設計では、そうした条件を満たす構造の骨組や材料とはどのようなものがふさわしいかを計算によって判断し、求められるデザインや空間のあり方を生かしつつそれを満たす安全な構造を実現していきます。
そのように建物の耐久性や安全性を科学的に検証するために用いるのが構造計算であり、地震、台風、大雪などの自然災害が多い日本では外部からの力に建物が耐えられるかを検証し、倒壊・損傷しにくい家を建てて居住者の安全や財産を守ることが不可欠です。
例をあげると、構造計算では建物の自重や積載荷重、地震や台風などの風圧といった外力に対する構造部材の応力(抵抗力)や変形を計算します。これにより、建物が安全基準を満たしているか、またどの程度安全なのかを把握することができます。
これらの計算は、建築物の安全性を担保し、住宅の品質を保証する上で欠かせません。
詳しくは弊社コラム「熊本で失敗しない土地選び|設計事務所が教える地盤と構造の話」でも述べている、ルート1~4とよばれる4種類の計算を用いて建物の安全性を確認します。
耐震等級について
また、今後も注意していきたい地震への対策としては耐震等級3にするのがおすすめです。
なぜなら、2回の震度7、5回の震度6とその他数々の余震を受けた熊本地震でも、耐震等級3の住宅は 倒壊したものがなかったというデータが残っているからです。
これは地震とお付き合いしていかなくてはならない私たちにとって、心強い味方といえますね。
しかも、建てた注文住宅が耐震等級3であれば、地震保険の保険料は半分になります。
ただし、「耐震等級3相当」とは違うという点には注意しましょう。「耐震等級3相当」とは耐震等級3と同等の強さではあるが、正式な認定を受けていないものとなります。
以上、熊本で注文住宅を検討していると気になる、注意すべき土地や構造設計のポイントについて設計事務所の視点からまとめてみました。
少しでもお役に立てたら幸いです。